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圧倒的な力量差で行われる暴力。
それを茫然と眺めていたコウタにソーマが近付いてきた。
「ぼさっとするな。今のうちに逃げるぞ」
「え……でも、逃げきれるのかな」
「あの黒いアラガミはオレ達を狙ってない。逃げるならいまだ」
そう言うと、コウタに担がれているレイリィを受け取ろうとする。
「……げない」
「ん?」
差し出されたソーマの手を振り払ったレイリィは、しっかりと自らの足で立ち、アマテラスを攻撃し続けている黒いアラガミを見た。
「わたしは、逃げないっ!!」
「レイリィ、何を言ってるんだよっ!」
「あのアラガミは辰嵩さんだ。わたしは辰嵩さんを絶対に連れて帰る」
「馬鹿が。一度アラガミ化した人間は二度と人には戻らない。ゴッドイーターの中じゃ常識だろう」
ソーマの言うことは正しい。
普通、一度でも完全にアラガミ化してしまったゴッドイーターは二度と人間に戻ることはできない。
「そうだとしても……そうだとしても、わたしは辰嵩さんを助ける」
両の眼から大粒の涙を流しながら叫ぶ。
ソーマの言っていることが正しいとわかっているからこそ、その事実が悔しかった。
「これは、わたしのわがままだから……みんなは逃げて」
涙を流しながらも優しく笑う。
「これは……命令だよ」
――――!
刹那、アマテラスの断末魔がドームに響き渡る。
見れば、黒いアラガミは触手でアイテールを地面に縫い付け、ゆっくりと近づいていく。
「……ソーマ、アリサを頼むよ」
コウタは小さく呟いて、ソーマにアリサを渡す。
「レイリィ、その命令には従えないよ。オレも残って辰嵩を助ける」
「ダメだよっ! コウタもみんなと逃げて」
「いいじゃんか。オレ達は同期だしさ、変な遠慮はいらないって」
それに、アリサが無事ならそれでいい。
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