愛した者

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そう、キルトは人間の子を助けようとしているのだ。 燃えている家の中で、そのことにすら気付かずにスヤスヤ眠っている人間を・・・ 紹介が遅れたが、キルトは人間でいうまだ二十歳ほどの青年だ。 女の神もほぼ同年代である。 彼女の名前は“フィア”。 キルトとは、数少ない昔からの友人であり、特に仲がいいのだ。 「どうしたの?そんな深刻そうな顔して・・・   !? キルト・・・泣いてるの?」 「フィアか。 少し黙っててくれないか。 集中してるんだ。」 そう言って、キルトは目を閉じた。 そのとき、彼の目からは最後の涙が一粒こぼれ落ちていた。 「集中って・・・。 キルトが泣いてるのにほっとけないよ。何見てるの?」 そう言ってフィアはキルトに近づき、キルトの視線の先を見ようとする。 そしてフィアは雲の切れ間から、はるか遠くに広がる地上の光景を目にしてしまった・・・。 「来るなっ!!」 その瞬間、キルトがとっさにフィアを力いっぱい押してしまった。 そして後ろに倒れるフィア。
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