一本目:SOS

14/15
前へ
/377ページ
次へ
俺が振り向くたびに顔を背けるもんだから、ちょっと面白かった。 一度振り向く、顔を背ける、俺は顔を戻す…と見せかけてハミルを見た。 対応出来なかったのか、がっつりと目があった。 「さっきからなんだよ、じろじろとさ」 「な、何でも無いわよ。 そっち、焦げるわよ」 「これは表面を少し焦がすくらいがいいんだ。 塩は…いいや、そのまま食べよ。このまんまでも十分美味そうだ」 ジュゥ~、と香ばしい香りと共に、脂が俺の手に滴りそうになる。 さすがに熱いので障壁を小さく展開する。 全体的に焼けた所で、思い切りかぶりついた。 「あっふぃ、あふあふ、ウマー! ハミルも食べろよ。美味いぞ」 俺が魚を突き出すと、ふぃ、と顔をそらした。 「いらないわよ、そんなの」 「そんなのって言うな。お前も食ってるんだろ?、ここの魚。 食えることに感謝しろよ」 「…何よ、偉そうにしちゃって…」 「俺は飯が食えなくて行き倒れした覚えが有るんでね。 こういう事には、厳しいぞ」 「…その話、聞かせて」 「…?、良いけど、何で?」 「外の世界の話、聞いてみたいの」 あぁ、そうか、こいつはここから離れた事が無いんだよな。 「良いぜ。ただし、これ食ったらな。 ほら、半分」 バキッ!、と串を折ってハミルに渡す。 ハミルは勢いで受け取ってしまう。 ハミルに渡したのは肝が無い半分と尻尾のほう。 肝って苦いんだよね。 「………(ありがと……」 小さく聞こえたその声に、少し目が丸くなってしまう。 なんだ、素直な子じゃん。 「おう、サッサと食っちまえ」 二人して、アツアツの魚にかぶりついたのだった。
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加