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俺が振り向くたびに顔を背けるもんだから、ちょっと面白かった。
一度振り向く、顔を背ける、俺は顔を戻す…と見せかけてハミルを見た。
対応出来なかったのか、がっつりと目があった。
「さっきからなんだよ、じろじろとさ」
「な、何でも無いわよ。
そっち、焦げるわよ」
「これは表面を少し焦がすくらいがいいんだ。
塩は…いいや、そのまま食べよ。このまんまでも十分美味そうだ」
ジュゥ~、と香ばしい香りと共に、脂が俺の手に滴りそうになる。
さすがに熱いので障壁を小さく展開する。
全体的に焼けた所で、思い切りかぶりついた。
「あっふぃ、あふあふ、ウマー!
ハミルも食べろよ。美味いぞ」
俺が魚を突き出すと、ふぃ、と顔をそらした。
「いらないわよ、そんなの」
「そんなのって言うな。お前も食ってるんだろ?、ここの魚。
食えることに感謝しろよ」
「…何よ、偉そうにしちゃって…」
「俺は飯が食えなくて行き倒れした覚えが有るんでね。
こういう事には、厳しいぞ」
「…その話、聞かせて」
「…?、良いけど、何で?」
「外の世界の話、聞いてみたいの」
あぁ、そうか、こいつはここから離れた事が無いんだよな。
「良いぜ。ただし、これ食ったらな。
ほら、半分」
バキッ!、と串を折ってハミルに渡す。
ハミルは勢いで受け取ってしまう。
ハミルに渡したのは肝が無い半分と尻尾のほう。
肝って苦いんだよね。
「………(ありがと……」
小さく聞こえたその声に、少し目が丸くなってしまう。
なんだ、素直な子じゃん。
「おう、サッサと食っちまえ」
二人して、アツアツの魚にかぶりついたのだった。
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