はきだす、

5/8
前へ
/100ページ
次へ
「雪だよ」 君が誰にとなく投げ掛けた 真っ白い雪。あの雪山よりも優しくて、人の気配があって、目の前に君がいる、アットホームな積雪。暖房の聞いた部屋、布団の匂い、あったかい。 「珍しいんだよ、こんなに積もるの。私も数年ぶりに見た」 すごい、すごい。指先を真っ赤にして、開放した窓のサンに手をかける。俺はその鐘のように冷たい白い皮膚に右手を重ねた。そっと彼女も指をからめてきて、なんだか満足した感覚がこみあげる。 「ホットココア、のもうか」 上目で見上げてきた少女の額にキスをひとつ。ああと返事をして、扉を開けるのだ。 せいしょうしゃ (しんがいぬき)
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加