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「あ、そーいえば春休み中に里見が事故って入院してるらしいよ。」
「え?そーなの。へえ。まあ確かにあいつ鈍臭いもんな。」
「だからね!でもさー。うちらの数学、誰が教えんだろ?」
「うーん。普通のジジイじゃない?」
「違うね!確か今日開講式でしょ?そん時に来るのよ~!数学講師の代名詞、イケメンが!ね、葵。」
「……うーん、私は普通のおじさんだと思うな。」
はっきり言って、どうでもいい。
イケメンでもお爺さんだろうと、関係ないし。どうせもう今年で最後だし。
…数学嫌いだし。
ちらりと未来を見れば、イケメンに思いを馳せているのか目が輝いている。
圭介に関しては呆れ顔だ。
そんな圭介とバチリと目が合った。
「つか、葵。髪伸びたな」
「…そーかな?」
「ああ。もう腰ぐらいじゃねー?」
頭をポンと撫でられる。
私より頭一個分背が高い圭介を見上げれば、八重歯が顔を覗かせた。
「いーなー。葵、サラッサラだもんね…。」
「お前はモジャモジャしてるもんな。」
「失礼ね。モテパーマと言いなさい。」
「…え?テンパじゃねーの?」
「うるさいわっ!ハゲ!」
「俺はハゲてねー!サラサラなだけだっつーの」
二人の会話が頭の奥で響く。
目の前にある昇降口のドアを開けたら、溢れる生徒の会話。
うるさい。
…少し耳を塞ぎたくなった。
「……はいはい。」
「未来、おまえっ。」
「あ、ほら。下駄箱。履きかえないの?」
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