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桜は、姉――山田 咲(やまだ さき)が好きだった花。
それは、唯一私が覚えてる姉のこと。
私と姉は8歳離れていて、小さい頃からずっと一緒だったと思う。
両親は私がまだ4歳の時に交通事故で亡くなった。
それから―――私は、姉と生きてきた。
両親は孤児同士で、頼れる親戚なんていなかったからだ。
だけど、3年前。
姉は、両親と同じ交通事故で死んだ。
―――独りになった。
私は、あまりのショックで姉のことに関する記憶を失った。
これらの経緯は全部人づてから聞かされたことだから、正しいのかはわからない。
だけれども少し前、やっとの思いで思い出せたのは、桜が好きなことを嬉しそうに話す姉の笑顔と小さい頃の私の笑顔。
ああ、私、お姉ちゃんが何よりも大切だったんだ。
直感的にそう思った。
もし、神様がこの世にいるのだったら、私をきっと幸せにしたくないんだと思う。
何度神様を恨んだんだろう。
思い出さえ私から取り上げた、神様を。
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