第1話 君はアリスなのだから。

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『白いウサギを探しているの。』 バスケ部のボールの音がうるさい体育館で明るく爽やかな声が響いた。 あれはあたしがやるはずだったアリスの役。 あたしはそう思いながらアリス役の子を見ていた。 「飛鳥。そんなにうらやましそうな目で見ないの。」 ふと、あたしは隣にいる友達の早紀にそう言われた。 そんなにうらやましそうに見ていただろうか…と思いながら。 あたしの名前は成瀬 飛鳥[ナルセ アスカ]高校2年生だ。 今までの会話の通り、あたしは高校の演劇部に所属している。 自分で言うのもなんだけどあたしは人より演技に関しては優れていると思う。 小さい頃からテレビの真似をする事から始めて、演技のレッスンにも通っていた 演技ほど楽しいものは無いし、演技が上手くなるならば努力は惜しまなかった。 だからこそ、この学校の演劇部の伝統であるアリスに抜擢されたのに…。 そう。この学校は演劇ではとても有名な高校なのだ。 だから、演技部に入りたくてこの高校に入学する人も多い。 その中で、この演劇部では伝統の役がある。 それが『アリス』なのだ。 この役は演劇部の中で一番演技が上手な者が抜擢される。
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