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ぼんやりした頭で目を開けると暗闇に浮かぶ幾つもの光。
その光は行くあてが無いかのようにゆらゆらと漂う。
不思議な光景だ。
あの光はなんなのだろう。
「あれは鬼火という。いわゆる、人間の魂だ。」
透き通った声が俺の耳に直接届く。
…そうか、あれは鬼火というのか。
聞いたことあるぞ。
…………えーと。
「ようやく起きたか。半日も気絶しおって…この軟弱者めが。」
「ぅえっ?んん?」
な、なんだ。
どこだここ。
隣を見ると目が覚めるほどの美形が。いや実際覚めた。
一気に覚醒した俺は、勢いよく起き上がる。
「はれ!?お、俺…あれ!?なん、で…」
「やれ、煩い人間だ。せいぜいその寝ぼけた頭で思い出すが良い。」
ため息をつく美形男をみて、真新しい記憶が一気に蘇る。
「は、伯爵様…?」
確認するように言うと、手に持っていた杖で顎を掬われる。
「ベルでいいと言ったはずだが?」
「べ、ベル様。あの、ここどこですか。」
見たところ馬車のようなものに乗っているようだ。
「ふむ。ここは、あの世とこの世の境目である地、"三途の川"だ。ステュクス、アケロンとも呼ばれているな。」
………………
え゛。
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