使用人になっちゃいました

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しっかりとした重厚な扉の取っ手を力強く引く。 「う゛ーっ!か、固い!」 『手伝おう。左の扉を引いてくれるかい。』 レムに手伝ってもらってようやく、扉は開いた。 レムの言うとおり何年も扉は開いていなかったらしく、扉が開いていくと同時に頭上から埃がパラパラと落ちてくる。 埃と蜘蛛の巣にまみれた薄暗い部屋に目を凝らして見てみれば、複数の棚に本がぎっしり置いてあった。 …と、いうことは。 「図書館…ですね。それも、とても広い。」 そして、立派だ。 壁は本棚で埋め尽くされており、丸い建物の形に沿って本が設置されている。窓際には読書できるように丸いテーブルが置いてあり、アンティークなデザインだ。 高い天井を見上げると、やはり上まで本棚が存在しており、高い所の本棚も読めるように階段とスペースが何段も設けられていた。 イギリスの小説に出てきそうな、とにかく立派な図書館だ。 それなのに、何故。 「酷い有り様ですね。」 本棚は埃にまみれ、天井には蜘蛛の巣が張り巡らしている。 『…本はね、人間の英知だ。だから、ここにいる妖怪たちは本が嫌いなんだよ。』 悲しい声で、レムは語った。
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