伯爵さん来ちゃいました

7/11
前へ
/88ページ
次へ
俺は、はははと渇いた笑いを漏らした。 「いやあ、襖に寄りかかってたら襖外れちゃってさ。」 嘘は言っていない。 しかし、妹の表情は依然として怒りを露わにしている。 「じゃあ、私がお兄ちゃんにプレゼントした…その、クマのぬいぐるみは?」 俺はちょうどクマが握り締めていたカッターを取り、目の前に転がっているクマを拾おうとしていたところだった。 ……… いかん、これじゃ「今からこのクマ切り裂きまーす☆」って主張しているみたいじゃないか!! 「いや、みゆう!違うんだこれは!」 「お兄ちゃん…サイッテーー!!」 バッチーーーン!と妹に頬を叩かれた俺。 妹はそのまま半べそかきながら部屋を出て行ってしまった。 ほらな!?助かったはいいけど、結局最後には惨めなことが起こるんだよもう! これが、幸運!?馬鹿げてる! やっぱり夢だったんだろう、と俺は強引に思うことにして、夜までずっと寝ていようと固く目を瞑った。 そして、その日の夜。 月明かりによって目覚めた俺は、同時に妙な金縛りに襲われていることに気づいた。 やべぇ、体動かねえ!? というか、窓際に誰かが立っている。 だ、誰だ!? 影はゆっくりこちらに近づく。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1830人が本棚に入れています
本棚に追加