恋しい。

3/5
前へ
/31ページ
次へ
「ねえ、ケイちゃんはクリスマスどうすんの?」 ビールからウーロン茶に切り替えた佐知が、すでにうとうとしかけている後輩を揺り起こした。 佐知は酔っ払い化しているし、ケイちゃんは弱くて潰れかけ。 やけ酒さえしなければ滅多に呑まれないあたしだけが、どうやら正気らしい。 「佐知。 そんなに揺すったらダメだよ。 気持ち悪くなるよ」 あまりの容赦なさに笑いながら諌めると、佐知は「いいの、いいの」と受け流した。 このままではケイちゃんが危ない。 「こら、佐知」 酔っ払いを引きはがすと、グラグラ揺れたままのケイちゃんをベッドに促した。 布団に埋もれるようにして、すぐにスヤスヤ寝息をたて始める。 「ちっとも強くなんないね、ケイのやつ」 愛らしい寝顔を眺めながら、フフッと佐知が笑う。 「体質じゃない? そういうあんたは弱くなったんじゃないの? 酔っ払い」 「酔っ払ってないよ。 全然」 佐知がユラユラ動きながらまた笑う。 幸せそう。 なぜかそんなことを考えてしまう。 新しい恋人ができたばかりの彼女。 頼りないのに、なぜかかっこよく見える彼氏らしい。 恋なんてそんなもの。 どこで、なにに落ちるかは予測不可能。 だからこそ素敵なもの。 「仁美。 彼とうまくいってんの?」 酔っ払いのくせに、不意に真面目な声。 少し笑みの残った顔で、佐知があたしを見ていた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加