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ミキサーのツマミを上げる。
園内に流れ出すクリスマスソング。
彼と付き合い出してから、毎年この時期になると寂しさが増す。
気のせいなんかじゃなく、必然的に。
楽しいクリスマスソングを自らかける仕事のせい?
園内の親子の笑顔が、ほかの季節よりうんと眩しいせい?
街中では輝くイルミネーション。
手を繋いで寄り添い歩く恋人達。
羨ましいなんて思わない。
……と思いたいけれども、実際は羨ましくてしかたがない。
十字架を信じないひとにとっては、ただのイベント。
本当は、家族で過ごす日じゃなかった?
恋人の愛を確かめ合う日にすり替えたのは誰?
そんなことを考えるあたしは、相当寂しがりやなのかもしれない。
離れている時間が多いのは、慣れた。
でも。
でもね。
女にとって、クリスマスは意外に特別な日。
……ねえ、惟鷹(これたか)。
あなたは知ってる?
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