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当日にどうしても会えないあたしたちは、クリスマスに一番近く会えた日に、ささやかなプレゼント交換をしてきた。
でも今年は、気がつけばそんな余裕すらなかった。
それなのに。
旅立つ朝、彼はあたしの部屋にこっそり贈り物を隠していたらしい。
食器棚の隅。
滅多に使わないくせに買ったランチプレートの上に、ディスプレイのように置かれた小さな包み。
赤いリボンを解くと、なかにはシルバーにキラキラと蝶が舞う髪飾りが入っていた。
明かりに反射して輝く様は、まるで惟鷹の瞳のようにも見える。
途端に、決意も忘れて彼が恋しくなった。
あたしからの贈り物は、受取人不在のまま引き出しに眠っている。
もう、渡すまいと思っていたのに。
クリアにしたはずの気持ちがくすむ。
なぜ、彼はこんなにもあたしを吸い寄せ続けるのだろう。
なぜ、あたしはこんなにも彼を愛したいのだろう。
迷宮の出口は依然見えないまま。
出口がないのなら、この手で破壊するしかない。
例え、どんなに血にまみれても。
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