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イルミネーションの煌めきを遠ざけるようにして、あたしは帰宅した。
気持ちばかりのクリスマスを祝うために、シャンパンとチキンを用意して。
嫌いだと言うくせに、しっかり習慣化されてしまった行動が憎い。
今夜はただのやけ酒になってしまいそう。
思いながら食事をしていると、不意に惟鷹との出会いを思い出した。
居酒屋。
トイレ前。
やけ酒が回っていたあたし。
サングラスで目を隠した惟鷹が、通路で吐き気を催したあたしを助けてくれた。
消したい恥の記憶のはずなのに、彼の姿が邪魔をして消すことができない。
あの晩、あたしは彼に恋をした。
澄んだグリーンアイズ。
まっすぐな性格。
特徴のあるこもり気味の声。
筋肉質な背中。
水のように炭酸を飲む姿にさえ、あたしは惹かれたんだと思う。
いまでも彼はちっとも変わらない。
好き。
唐突に、そう感じた。
色褪せない気持ち。
だめなのに。
また、決意が鈍る。
次に会ったとき、あたしは彼に告げなければならないのに。
別れよう。
あたしは彼の背中を押したい。
それだけを考えなくちゃ。
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