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目が覚めたら泣いていた。
テーブルに突っ伏して、そのまま眠ってしまったらしい。
クリスマスイブにひとりで酔い潰れるとか、バカ過ぎる。
切なすぎる。
テーブルには、あまり手をつけられなかったチキンやサラダ。
ひたすらバケットをかじりながら、シャンパンやワインをがぶがぶ飲み続けた気がする。
明日も仕事なのに、感傷に浸りすぎたみたい。
息を吐くと、涙がひと筋流れた。
頬を拭い、時計を見る。
23:36
もうすぐこの夜も終わる。
早く明日になればいい。
早く明後日になればいい。
思いながら、床に投げ出したままのケータイを手に取った。
……着信履歴。
バイブにしたまま解除していなかったので、気づかなかったようだ。
ボタンを操作して、あたしは固まった。
惟鷹。
心臓が早鐘を打ち始める。
待って。
待って。
冷静に考えないと。
いま、彼はイギリスにいるはず。
彼のケータイは、国際通話は対応していないはず。
……帰ってきた?
……日本に、いるの……?
ドクドクとうるさい鼓動を持て余しながら、もう一度表示を確認する。
ほぼ一時間前。
着信だけで伝言はない。
メールも来ていない。
どういうこと?
これは……どういうこと?
ピンポーン、とチャイムの音。
静けさのなかに響いて、あたしは身体全身で飛び上がった。
夜中だ。
苦い経験上、躊躇して動けずにいると、手のなかのケータイが震え出した。
ピ、と通話ボタンを押して耳元へ持っていく。
『……仁美。
俺。
開けて』
数日ぶりの、惟鷹の声。
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