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「年末には帰れるから。
正月はオフだし」
精一杯の言い訳。
彼だってわかってる。
あたしの涙のくだらない理由。
あたしだってわかってる。
彼にはどうしようもないこと。
惟鷹が、少しだけあたしと距離を縮める。
ミシ、とベッドのスプリングが軋む音。
彼のグリーンアイズが近づいてくる。
唇がそっと重ねられた。
キスなんて、もう何度したかわからない。
それなのに、あたしはいつまで経ってもこのトキメキに慣れないまま。
唇が触れるたび、溢れ出す想い。
あなたが好きでしかたない自分を思い知る。
いつでもドキドキして。
いつでも終わりを知りたくなくて。
あなたが欲しくてしかたなくなる。
狂ってしまいそうな熱に支配されてしまう。
それが心地好いことも知ってる。
どんなに哀しくても、涙まで巻き込んで彼の虜になる。
どこまでも女のあたし。
深いキス。
息もできないくらい激しいくせに、愛おしむように切ない口づけ。
惟鷹が、優しく支えながらあたしを横たえた。
ジェントルマンな国の血を受け継ぐ彼は、いつだって、どんなときでも優しい。
「仁美」
吐息まじりにあたしの名を呼ぶ。
泣きたくなるくらいセクシーな、彼の声。
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