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目が覚めた。
天井が違う。
そうぼんやり考えてから、惟鷹の部屋に泊まったことを思い出した。
隣に目を向けると、飴色の髪が布団から僅かに出ている。
……潜りすぎ。
思わず笑ってしまう。
子供みたい。
惟鷹が身じろぎしたので、慌てて笑いを引っ込めた。
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4:07
いま起こしたらかわいそうだ。
あたしは静かに起き上がると、無意識に窓際に向かった。
小さな出窓に飾られた、光るサンタクロース。
幼い頃は、両親の演出に騙されて信じきっていた。
赤い服を着て、トナカイのソリで空を駆ける白髭のおじいさん。
カーテンを指で少しだけ押し開け、窓の外の空を見た。
まだ暗い冬の夜の空。
夜景とは言えないほどの輝きを下から受けても、空は暗いまま。
サンタクロースを信じなくなったのは、いつからだろう。
ポッカリ穴が空いたような、裏切られたような切なさを抱いたことだけは、鮮明に覚えている。
もし。
もしもサンタクロースがいるなら、どうかあたしの願いを叶えて欲しい。
一度だけでいい。
一瞬だけで構わないから、どうか彼をあたしにください。
クリスマスイブの彼をあたしにください。
箱に詰めて、リボンをかけて、あたしの部屋に届けてください。
たった一度きりでいいから、あたしだけの彼が欲しい。
みんなのものじゃなく、あたしだけの彼が欲しいの。
サンタクロースさま。
これは、わがままですか……?
「風邪ひくよ」
突然背後から声がかけられて飛び上がって振り向くと、いつの間にか惟鷹が立っていた。
肩からブランケットをかけてくれる。
温かい。
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