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あれは私がまだ小学校にも入らない頃。
私は、母の実家の近くにある海で溺れた。
溺れたのは、後にも先にも、あれ一回だけだ。
夕暮れの迫る海は危険だと知っていたのに、どうしても泳ぎたくて、こっそり一人で海に出た。
流れに足を取られて、気がついた時には波に浚われていた。
私は為す術も無く、ごぼごぼと渦巻く水の中で掻き回されていた。
苦しかった。
どちらが上で、どちらが下なのか。それさえ分からなくなり、意識が朦朧としてきた。
その時。
白くて細い腕が、ぐいと私の手首を掴んだ。
そして一気に、海面へと引っ張りあげてくれたのだ。
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