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「アグロっ!」
広い大地で愛馬の名を呼ぶ。
すぐに私の元に駆け寄って来たアグロの、黒く美しい毛並みを撫でる。
「どう、どう。さぁ、行こうか…」
―――どれほど時が流れたのだろうか?
もう何度朝日を見たかも覚えていない。
私が覚えているのは倒した巨像の数のみ。
まだ先は長い…
「…アグロ?」
次の巨像の場所へと向かう途中、突如アグロの足が止まった。
まさか、怪我でもしてしまったのだろうか?
「どうした?」
アグロから降りて首を撫でるが、彼女は黙って一点を見つめるだけだった。
アグロの視線の先には青く生い茂る深い森。
どうやら、あちらに行きたいようだ。
「…………」
あちらは古の剣の示す方向とは別の道になる。
寄り道をしている暇はないのだが…
「…わかったよ、アグロ」
アグロは頭の良い馬だ。
あの森に何かを感じたのだろう。
私は手綱を握り、森の奥へと足を進めた。
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