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私が森の奥で見たものは、幻想的な光景だった。
光が届かないところではシダ植物が生い茂り、それらは微かに発光していた。
木が開けているところには、純白の花が光を一身に浴びている。
近くに川が流れているのだろうか、耳をすますと川のせせらぎが聞こえてくる。
木々の間から射す木漏れ日は、まるで無数の光の矢のようだ。
アグロの手綱を引き、私は苔の生えた遺跡に寄り掛かった。
「私に休めと言うのだな?アグロ」
真っ直ぐ見つめる瞳。
言葉を交わさなくとも、伝わる友の気持ち。
―――そうだな。
少し…休もう―――
私は遺跡に腰を下ろすと、静かに目を閉じた。
その様子を見ていたアグロは一度だけ鳴くと、どこかへ行ってしまった。
君にも無理をさせてしまったな…
今は、ゆっくり休んでくれ。
緩やかに流れる時に身をまかせる。
久々の休息に、張り詰めていた心が少し楽になったようだ。
友に感謝しよう。
これでまた、
非情になれる―――
そして、
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