信乃と荘介

2/4
前へ
/10ページ
次へ
大晦日には珍しく 雪が降っていた。 明日にはきっと積もっていることだろう。 そんな中、1人の少女が 雪の中を息を切らせながら走っている。 「与四郎―!」 その声に応えるかのように 犬の鳴き声がした。 少女はそれがした方向に駆けた。 「こんなところに居たのか」 ホッとした表情を見せたが すぐさま、顔をしかめる。 犬の傍に雪が小盛りになっているからだ。 まだ、雪に埋もれていないところからは 衣服が見えた。 「…与四郎、これは行き倒れというやつだろうか?よく見つけたな」 犬の頭をよしよしと なでながら塊に近づく。 そして、雪を払う。 雪から出てきたのは 女と少年だった。 おそらく、親子なのだろう。 「大分、冷えているな。与四郎、母親の方は任せた。オレはコッチを…」 母親を犬の背に乗せ 自分は少年を背負う。 引きずるようにして歩き出した。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加