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大晦日には珍しく
雪が降っていた。
明日にはきっと積もっていることだろう。
そんな中、1人の少女が
雪の中を息を切らせながら走っている。
「与四郎―!」
その声に応えるかのように
犬の鳴き声がした。
少女はそれがした方向に駆けた。
「こんなところに居たのか」
ホッとした表情を見せたが
すぐさま、顔をしかめる。
犬の傍に雪が小盛りになっているからだ。
まだ、雪に埋もれていないところからは
衣服が見えた。
「…与四郎、これは行き倒れというやつだろうか?よく見つけたな」
犬の頭をよしよしと
なでながら塊に近づく。
そして、雪を払う。
雪から出てきたのは
女と少年だった。
おそらく、親子なのだろう。
「大分、冷えているな。与四郎、母親の方は任せた。オレはコッチを…」
母親を犬の背に乗せ
自分は少年を背負う。
引きずるようにして歩き出した。
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