信乃と荘介

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父が手掛けた事業の借金で 会社は倒産し、家も何もかも 差し押さえられ、半ば逃げるように 伊豆を出た。 千葉にいる、親戚を頼りに 母と一緒にようやく東京までこれた。 それなのに、雪に見舞われてしまい 母はとうとう倒れてしまった。 そして、俺も… だけど、遠のく意識の中で 犬の鳴き声が聞こえた。 次に、冷たかった雪が取り払われ 温もりを感じた。 ―…助かったのか? 意識が戻ってみたら 俺はふとんの上で寝かされていた。 そして、しばし、状況の整理をする。 のそのそとおきあがって見ると 「ん」と声がした。 見れば、隣で髪のながい 女の子がいるではないか。 「う、わわわわ!」 と、叫びたかったが 飲まず食わずが続いたせいか 声がろくに出ない。 しかし、俺の気配に気づいたのか 女の子が起きた。 目をこすりながら話しかけてくる。 「おう、起きたのか」 見た目に反して、男っぽい喋り方をする。 「お前、行き倒れてたの覚えているか?」 コクコクと頷くと 彼女は「ちょっと待ってろ」と言って 部屋から出て行った。 すぐに戻ってきて 手にはシチューを持っていた。 「まぁ、食べろ」 俺はありがたく頂戴した。
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