信乃と道節

2/3
前へ
/10ページ
次へ
俺に妹がいる。 そのことを知ったのはつい最近のこと。 女中達の噂話が気になって ヨシロウという、初老の男に問いただした。 この男は月に2・3度の頻度で 母さんに定期報告しに来ている。 この定期報告というのが、俺の妹のことだった。 そもそも、なんで妹なのに 一緒に住んでいないのかというと 父親が違うからだ。 だから、妹は生まれたのち すぐに養子に出された。 その妹が豊島区の大塚にいると聞き 一目会いたくて家を出た。 「どこだよここ~!!」 迷うのも当たり前。 子供の足ではせいぜい隣町までが限界。 日も暮れてきた。 不安が募る。 携帯で迎えに来てもらおうかとも思ったが 携帯はGPS機能がついていて 居場所がすぐにバレるため置いてきていた。 帰るのも困難になっていた。 「やあーっ!!」 「おおっ!大分上手くなってきたな」 バシン、バシンと 小気味よく乾いた音がする。 その音がする方へ導かれるように向かう。 塀をよじ登り中の様子を見た。 「よぉし。今日はここまで。帰り支度をしなさい」 「ありがとうございました!」 そこは、どうやら剣道道場らしい。 しかも門下生は女の子一人のようだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加