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な、なんなのよ!
あの腕はナイフ?
あんなの人間じゃないわ
化け物よ!
ば・け・も・の!
だって普通の人間の手が大木を切り裂けるわけないじゃない
でも・・・私を助けてくれた?
あの時、大きな木が私に倒れてきた
私は目を閉じた
ここで死ぬんだと思った
お城を脱け出した罰かしら?
目をとじてからしばらくたった
実際は数秒も経ってなかった
大木は倒れてこない
かわりに風を切るような音がした
私は目をあけた
そこにはアイツがいたわ
黒いネコを片手で抱いて立っている
私に「大丈夫?」って声をかけてきた
私はとっさに呟いてしまった
化け物
アイツは悲しそうな目をしたわ
悲しそうなのに優しい目
なんで?
私が悪いの?
だってアイツは化け物なのよ?
どうしてこんなに罪悪感が沸いてくるの?
「ごめんね」
アイツは背を向けて立ち去ろうとした
待って
ちょっと、私ってば何を言ってるの
アイツが振り向いた
抱えられているネコが毛を逆立ててこっちを睨むように見ている
アイツを守ってるのかしら
アイツはネコの頭を軽く叩いた
ネコはバツが悪そうに、にゃーと鳴いた
「なに?」
アイツが問いかけてきた
そうだった
私が呼び止めたんだ
私の口は勝手に言葉を紡ぎ出していく
ごめんなさい
ありがとう
こんなこと言うつもりなんてないのに
アイツは少し微笑んだ
「バイバイ」
そのまま立ち去っていった
一人になるとわかったことがある
アイツが声をかけてから怖いと思わなかった
・・・・化け物にもいいやつがいるのかしら?
あっ、名前聞けばよかった
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