大きな変化の兆し

13/15
前へ
/1035ページ
次へ
「イヤになっちゃうよねー、ホント。なーんにもわかってないんだから」 屋上に、楽しそうな声が響く。 フェンスを乗り越えた先にあるのは、保健室に向かったはずのユウの姿。 お気に入りのいちごみるくキャンディを口に入れ、足を宙に投げ出してぷらぷらと揺らしている。 その額の傷は、もうとっくに塞がっていた。 顔を濡らしていた血も、綺麗に拭き取られている。 「所詮はただの凡人。どんなに足掻いたって、カンナと結ばれることはないのに」 哀れだねえ、とユウが笑った。 風が吹いて、その真っ赤な髪の毛が揺れる。 「キミだってそう思うでしょ?――駄犬くん」 ガシャン、瞬間的に体を捻ったユウが片手でフェンスを殴った。 その拳はフェンスを突き破り、ナオの左足スレスレのところで止まる。 「オレの背後を狙うなんて、キミには学習能力ってものがないのかな?」 「生憎、俺は諦めの悪い男なんでな」 「ハハッ。超ウザーイ」 ユウは口元を歪めると、スッと手を引っ込めた。 フェンスには、ぽっかりと穴が空いていた。
/1035ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35601人が本棚に入れています
本棚に追加