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「…貴様、何を企んでいる?」
「別に何も?ただ――」
ユウがポケットから小さな砂時計を取り出す。
「砂の落下速度の変化を観察しているだけさ」
「…砂の落下速度?」
「そう。少しずつだけど、速度が増してきてるんだ」
訳がわからない、とナオは顔を顰めた。
砂時計の砂が落ちるスピードは一定のはずだ。
変化するなんてことはあり得ない。
「まったくキミは頭が固いね。もっと柔軟な考えを持った方がいいよ」
「…何だと?」
「これは比喩だよ。この砂は、これまでカンナの安定を保ってきたもの。それがどんどん崩れ落ちてゆく様を、砂時計に喩(たと)えているのさ」
「…では、その速度が増しているということはつまり――」
「カンナがオレたちのことをすべて思い出す日は、そう遠くないってことだよ」
ガキッ、とユウが奥歯でキャンディを噛み砕いた。
「正式な婚約者を決める日も、ね」
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