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ゴクリ、ナオの喉が鳴る。
ユウはキャンディを食べ終えると、あーあ、と伸びをして立ち上がった。
「さて。無駄話はこれくらいにして」
"無駄話"という単語にナオは盛大に眉根を寄せるが、ユウは特に気にする様子もなくひょいとフェンスを飛び越えた。
「じゃあねー」
地面に着地するとすぐさま体勢を立て直し、ナオに手を振って歩き出す。
そのまま屋上から出ようとしたところで、ユウはふと立ち止まった。
「――ああ、そうだ。ひとつ言い忘れてたんだけど…」
首だけを動かし、ナオに笑顔を向ける。
「カンナ昨日、オレの背中を蹴ったんだよ」
ナオの目が大きく見開かれる。
ユウはそれを見て満足したように笑みを深めると、再び前を向いて歩き出した。
ガチャ、と扉が閉まり、ユウの姿が屋上から消える。
「……背中を、蹴った…?」
ナオは困惑した様子で、先程ユウが言った言葉を反復した。
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