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いつもの帰り道とは違った道を、2人で歩く。
お互い、特にこれといった会話もせずに沈黙していた。
「…ねえ、何か喋ってよ」
「お前こそ何か喋れよ」
「そんなこと言われても…」
昔はよく2人で出掛けたりしていたはずなのに、それにデートという名前が付けられた途端、お互いに何だか緊張してしまう。
「あー、もう!しーちゃんがデートしてくれとか変なこと言うから悪いんだよ!」
「はあ!?俺のせいかよ」
「そうだよ!そもそも何で急にあんなこと言ったの?」
「…それは…」
詩音は言葉に詰まった。
驚くほど鈍感な神奈はきっと、自分がデートに誘われた意味をちゃんと理解していない。
ここではっきり言ってもいいが、デートはまだ始まったばかりだ。
神奈にいいところをひとつも見せられていないのに、こんなところで台無しにしたくはない。
「そんなの自分で考えろ!」
結局詩音はうまく答えることができず、すべてを神奈に丸投げしてしまった。
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