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「何やってんだよお前は…」
詩音に呆れたように言われ、神奈はごめんと苦笑する。
あの少年を見た時、一瞬何か形容し難い不思議な感覚に襲われた。
しかし、神奈がその感覚の正体を考えることはできなかった。
なぜなら――
「あ。クレープ屋さん発見!」
前方にお目当てのクレープ屋を見つけたからだ。
神奈の脳内は一瞬にしてクレープで埋め尽くされ、先程の少年のことなどあっという間に脳の片隅へ追いやられる。
「ほら、ちゃんとあったでしょ!」
神奈はそう言うと、何を思ったのか突然詩音の手を掴んで歩き出した。
「お、おい。お前、手…っ」
「いいから早く早くっ」
「いや、よくないだろ…!」
不意打ちでこういうことをやられては困る。
心臓が保たない。
詩音は必死に手を離すよう訴えるが、神奈がそれを聞き入れることはなかった。
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