意識

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「いっただっきまーす!」 クレープ屋の奥にある喫茶スペースから、神奈の元気な声が響いた。 その前にはそれぞれ味の違うクレープが4つ並んでいる。 もちろん、これはすべて神奈のものである。 「…神奈は本当によく食うよな」 向かい側に座った詩音が感心したように呟く。 ちなみに詩音が注文したのはアイスカフェオレのみである。 「しーちゃんも頼めばよかったのに、クレープ」 「いや、俺はさすがに…」 神奈がひとりでクレープを4つ頼んだ時、店員はおもしろいくらいに動揺していた。 あの空気の中、神奈の次に5つめのクレープを頼むことなど詩音にはとてもできなかった。 それでも、神奈がおいしそうに食べている姿を見ているだけで自然とお腹がいっぱいになるのでよしとしよう。 そんなことを考えていた詩音の前に、神奈がはい、と食べかけのクレープを差し出した。
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