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「…え」
「このクレープすっごくおいしいよ。しーちゃんにも一口あげる!」
これはいわゆる"間接キス"というやつではないだろうか。
「べ、別にいらな――」
羞恥に負けて断ろうとした詩音だが、待てよ、と思い直す。
ここで断ってしまったら何も変わらない。
せっかくのデート、せっかくのチャンスなのだ。
無駄なプライドや羞恥心などは捨てて、男らしくいくべきである。
「……じゃあ、」
詩音は意を決してクレープ――ではなく神奈の手首を掴んだ。
え?と驚く神奈の手を引き寄せ、そのままクレープを口に運ぶ。
「――はい、間接キスごちそうさま」
極めつけにそう言ってクスッと笑えば、さすがの神奈も顔を赤くした。
「へ、変なこと言わないでよ!」
神奈は詩音の手を振り払い、豪快にクレープにかじりつく。
俺もやればできるじゃん、と詩音は小さくガッツポーズをした。
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