意識

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詩音は歌が上手い。 神奈も何度か詩音の歌声を耳にしたことがあるが、その歌唱力はプロデビューも夢ではないほどだった。 今でもそれは健在のようだ。 神奈は詩音の歌声を聴きながら、うっとりとした表情を浮かべた。 ノリの良いロック調の曲なのだが、手拍子をすることも忘れて思わず聴き入ってしまう。 「手拍子くらいしろよ」 と、一曲歌い終えた詩音が不満そうにマイクを渡してきた。 「ごめんごめん。つい聴き入っちゃって」 「そういうお世辞はいらねーよ」 「お世辞じゃないよ!しーちゃんの歌声、本当に素敵なんだから!」 食い気味に言われ、詩音は照れくさいやら何やらで反応に困ってしまう。 「…わ、わかったから。ほら、お前も早く歌え」 「あ。何歌うか決めてなかった。しーちゃんもう一曲歌って!今度はバラード系がいいな!」 「お前なあ…」 ぶつくさ言いながらも、結局は神奈の要望に応えてしまうのが詩音である。 これが惚れた弱みってやつか、とため息をつきながら次の曲を入れた。
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