意識

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しばらくして流れてきたのは、詩音と神奈が大好きなアーティスト・"RUN"の曲だった。 【分身】という題名のその曲のメロディを聴いた瞬間、神奈は弾けるように顔を上げた。 詩音はそんな神奈の様子に気づかず歌い出す。 『辛くて悲しくて  どうしようもなくなったとき  ぼくはきみの名前を叫ぶ  ヒーローみたいなきみは  いつだってぼくを助けてくれる  痛いことも苦しいことも  全部全部失くしてくれる  でもぼくはいつだって後悔してる  きみもきっと後悔してる   だからぼくらはいつだって  笑顔で涙を流すのだろう』 ――思い出して 神奈の中で何かが訴えている。 ――きみはいつだってぼくの傍に この曲を聴いたのはいつだっただろう。 ――ぼくはいつだってきみの傍に その時自分は何をしていただろう。 ――だってぼくらは 思い出せないことがあるような気がして、胸がざわつく。 ――可哀想な分身 それは一体、何?
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