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神奈の華奢な体は、詩音の腕の中にすっぽりと収まった。
突然後ろから抱き締められ、その体が強張っているのがわかる。
それでも詩音は、腕の力を緩めることはしない。
「……しー、ちゃん…?」
「もう無理なんだよ」
「…え?」
「ずっと怖かった。この関係が変わってしまうのが、怖くて仕方なかった。…でも、もう無理だ」
「何、言って…」
「神奈。お前は、亮夜のことが好きなのか?」
ひゅ、と神奈が息をのんだ。
その反応が、すべてを物語っていた。
「それでもいい。それでもいいから――」
詩音が腕の力を緩め、神奈を自分と対面させる。
「俺のこと、ちゃんと見ろよ。幼なじみじゃなく、ひとりの男として」
真っ直ぐな視線に射抜かれて、神奈は身動きが取れなくなった。
詩音はそのまま顔を近づけ、そして――
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