35602人が本棚に入れています
本棚に追加
「カンナはそんなこと、望んでないと思うけどなー?」
その一言に、少年はぐっと言葉を詰まらせた。
悔しそうに唇を噛み締めながら、ゆっくりと手を離す。
「お利口さんだね。どっかの駄犬とは大違いだ」
「…テメェは一体何しに来た」
「んー?ちょっと様子を見に来ただけー」
「……気分悪ぃ。帰る」
「あ。コレどうすんのー?」
「テメェの好きにしろ」
ユウが気を失って地面に転がっている男を足でコツンと蹴れば、少年は興味なさげにそう応えた。
えー、ユウが嫌そうな声をあげる。
少年は構わずその横を通り過ぎた。
「――ねえ、カンナとはもう接触した?」
「………いいや」
すれ違い様にそんなやり取りをして、2人は別れる。
「本当に成長してないねえ、キョウスケくんは」
ユウの言葉は、暗くて狭い路地裏によく響いた。
最初のコメントを投稿しよう!