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中年の男性だった。
全身から酒の匂いが漂ってきて、神奈は思わず顔を顰める。
「な、何もしてないです」
身の危険を感じた神奈は、慌ててブランコから下りてその場から立ち去ろうとした。
だが、男性に腕を掴まれ前に進めなくなってしまう。
「は、離してください…!」
「えぇ~?聞こえましぇ~ん」
「誰か助け…っ」
助けを呼ぼうとするが、近くに他の人の気配はない。
「助けなんてぇ~来ないんでちゅよ~」
イヒヒヒヒヒヒ、男性の下品な笑い声が耳に障る。
――助けなんて来ないんだよ
「はいはい、大人しくしましょうね~?」
――はい、大人しくしててねー
脳内で映像が重複する。
心臓が暴れだして、神奈の中で何かが弾け飛びそうになる。
その直前、掴まれていた神奈の腕が自由になった。
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