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携帯電話が、ポケットの中で震え始めた。
もしかして、と淡い期待を抱きつつ取り出せば、その液晶には【亮夜】の文字。
詩音は、期待してしまった自分を鼻で笑った。
無視しようとしたが、しばらく考えた後に思い直して通話ボタンを押す。
「……もしもし」
『さっき浮間に会った。コンビニの帰りに偶然』
何かと思って電話に出れば、いきなり始まる神奈の話題。
詩音の口から苦笑が漏れる。
「…へえ。で、それが?」
『…浮間、思い詰めたような顔してたぞ。様子もおかしかった』
「……ふーん…」
『詩音お前、今日浮間とデートしたんだよな?その時何か――』
「あのさあ、亮夜」
『あ?』
「お前、ずるいよ」
詩音が掠れた声でそう言った瞬間、亮夜は言葉を失った。
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