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ベッドの上ですやすやと寝息を立てる神奈がいた。
母親は安堵のため息をついた。
神奈に近寄って、その柔らかな頬に触れる。
「…神奈」
試しに名前を呼んでみるが、起きる気配はなかった。
無防備な寝顔は、幼い頃の面影を残している。
ぽたり、母親の目から涙がこぼれ落ちた。
「…ごめんね…。ごめんね、神奈…っ」
安らかに眠る神奈の体に縋り付いて、声を詰まらせながら謝罪する。
「あなたは何も悪くないのに…悪いことなんて何ひとつしていないのに…っ」
この華奢な体に、色々なものを背負わせてしまった。
自分の元に生まれてきたせいで――あの時から、そんなことばかり考えてしまう。
せめて自分の手で何とかしたいと思うのに、無力な自分には何もできない。
「ああ、神奈。こんなお母さんを許して…」
あの蛇口の水のように、涙はとめどなく流れて頬を濡らす。
肩を震わせて、母親は泣き続けた。
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