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「…残酷すぎる」
誰に言うでもなく、ナオがぽつりと呟いた。
電柱の上に片膝を抱えて座り、その赤い髪の毛を夜風になびかせる。
青みがかった瞳に映るのは、神奈の母親の痛ましい姿。
僅かに開いたカーテンの隙間を通して事の一部始終を見ていたナオは、険しい表情で親指の爪を噛んだ。
「そんなところで何してんのー?」
不意に呑気な声が聞こえ、ちらりと視線を下に向ける。
「覗きは犯罪だよ?」
ユウが、こちらを見上げてにこにこと笑っていた。
ナオはチッと舌を打つ。
「貴様は何故いつも俺の邪魔をする」
「邪魔してるのは駄犬くんの方でしょ?」
「その呼び方はやめろ」
「えー。じゃあ何て呼べばいいの?"捨て犬くん"?それとも――」
「もういい黙れ」
静かに苛立ちを示すナオだったが、ユウには何の効果もないようだった。
相変わらず楽しそうに笑っている。
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