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ガタッ!
突然イスから立ち上がった神奈に、クラス中の視線が集まった。
「どうした浮間。まだ授業は終わってないぞ」
計算式の書かれた黒板を背に、数学教師がため息混じりの言葉を掛ける。
それにドッと沸くクラスメイト。
「す、すみません…」
神奈は顔を真っ赤にしながら粛々と席に着いた。
いつの間に寝てしまったのだろう。
何だかとても怖い夢を見た気がするが、思い出せない。
「カンナ。大丈夫?」
担任教師に頼み込んで(半ば脅して)神奈の隣の席をゲットしたユウが、心配そうに顔を覗かせた。
「あ、うん。大丈夫だよ」
「怖い夢でも見てたんでしょー。可哀想に」
「え。どうして…?」
「だってオレ、カンナのことだったら何でもわかるもん!」
もちろん、カンナが知らないようなことも、ね。
ユウのその囁きは、数学教師の「そこ、うるさいぞ!」という注意の声にかき消された。
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