ちらつく

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顔を上げた時、教室には自分以外誰もいなくなっていた。 戸惑い気味に辺りを見回せば、どこかから声が聞こえてくる。 ――二股掛けてたんだって ――サエの彼氏横取りしたらしいよ ――サイテー 壁に反響して、じわじわと追い詰めてくる声。 違う、そんなことしてない! どんなに否定しても、声は消えない。 どんどんどんどん近づいて、大きくなって。 心を蝕んでいく。 ――クラスの空気悪くしてるの、気づいてないのかな? ――超ムカつく ――いなくなっちゃえばいいのに ――疫病神 やめて、もうやめて! 耐えきれなくなって両手で耳を塞ぎ、瞼を閉じる。 途端に声が聞こえなくなり、震える肩にぽん、と誰かの手が置かれた。 ――ねえ、神奈 優しい声。 恐る恐る瞼を開ける。 ――消えてよ 目の前にあったのは、それはそれは恐ろしい、――
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