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顔を上げた時、教室には自分以外誰もいなくなっていた。
戸惑い気味に辺りを見回せば、どこかから声が聞こえてくる。
――二股掛けてたんだって
――サエの彼氏横取りしたらしいよ
――サイテー
壁に反響して、じわじわと追い詰めてくる声。
違う、そんなことしてない!
どんなに否定しても、声は消えない。
どんどんどんどん近づいて、大きくなって。
心を蝕んでいく。
――クラスの空気悪くしてるの、気づいてないのかな?
――超ムカつく
――いなくなっちゃえばいいのに
――疫病神
やめて、もうやめて!
耐えきれなくなって両手で耳を塞ぎ、瞼を閉じる。
途端に声が聞こえなくなり、震える肩にぽん、と誰かの手が置かれた。
――ねえ、神奈
優しい声。
恐る恐る瞼を開ける。
――消えてよ
目の前にあったのは、それはそれは恐ろしい、――
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