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「神奈!」
強く肩を揺すられ、神奈はハッと目を覚ました。
「あー、もう。やっと起きた」
呆れたように言って顔を覗き込んできたのは、璃麻だった。
神奈はほっと息を吐く。
顔を上げて辺りを見回せば、教室内に自分たち以外の生徒が誰もいないことに気づいた。
「…みんなは?」
「体育館に移動したわ。次の授業体育だから」
「そっか…」
数学の授業はとっくに終了していたらしい。
全然気づかなかった、と神奈は苦笑した。
「てか、顔色悪いわよ。大丈夫?」
「…え。そう?」
「すっごく疲れたような顔してる。何、寝不足?」
「そんなことはないんだけど…」
「念のため、保健室に行って少し休んだら?先生にはあたしから言っておくから」
「…うん。ごめん、ありがとう」
「いいのよ。じゃ、あたしはもう行くわね」
早足で教室を後にする璃麻に、悪いことをしたなと神奈は反省する。
はあ、とため息をつけば、幸せが逃げてしまったような気がして憂鬱になった。
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