1st GAME

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ボコボコなグラウンドのマウンドに立つのは、陽菜 渋々バッターボックスに立つのは楊 陽菜は鼻唄まで歌っているが、楊はバツの悪そうな顔をしている 「……じゃあ、いきますよ」 「いつでもどうぞ」 先ほどまで笑みを浮かべていた陽菜から笑顔が消える 沢山のボールの入ったカゴから一球取り出し、手の中で軽く転がしてみる 軽く肩を回し、ボールの縫い目と指を合わせて軽く握った そしてゆっくりとセットに入り大きく振りかぶる カキーンとバットの音が静かなグラウンドに響く ボールは真ん中に入り、打ち返された球は陽菜の頭上を通り過ぎた 「ふふっ さすがですね」 「そんな芸のない球じゃ負けちゃうよ?」 「確かに、そうですね」 陽菜は頭を掻いて二球目を手に取った 一球目と同じセットでボールは指から離れていった さっきと同じ真ん中 スピードだって変わっていない 楊はバットを出した だが、芯に当たる音は聞こえてこない 聞こえるのは、ボールが地面に転がる音だけ 「……え」 ……曲がった バットを出したときボールが外に逃げた スピードは無くても曲がりは大きい この子、経験者だ ……しかも熟練の 「ラスト一球ですよ」 「……来なよ」 また球を取り出して、指と縫い目を合わせながら握った さっきみたいに曲げてくるか、落ちてくるか けど、そんなんいくらでも打ってきたんだ ……打てる 楊は体重を後ろに移動させて前足を地面につけた フワ 陽菜の投げた球は山を描き、ストンと足元に落ちた 「…ストライクですよ カーブとかドロップみたいに曲がらなくても、 チェンジアップだって立派な変化球です」 陽菜はゆっくりとマウンドを降りた              
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