1st GAME

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部室から出てきた部員は楊が空振るを目撃し、目を丸くした 「おい、楊が空振りしたぞ」 「まじかよ……」 陽菜はバットを握り、バッターボックスに立った 「おい、あの子左打ちだぞ」 「右投げ左打ちか 女の上に左打ちじゃあ飛ばないな」 普通、バッティングで大切な押手は利き手…つまり右打ちなら右手だ 右投げ左打ちは確かにファーストベースまで近くなる けど、利き手でない方でボールを押さなければならない 飛ばすには左腕を強化しなければいけないし、なにより飛距離の勝負になれば不利だ このゲーム、あの子が負ける 楊はゆっくりマウンドに上がりボールを手にとる 「得点は1かあ。 まあ打たせなきゃいい話だしね」 ボールを指に引っかけながら前を見つめた 陽菜は1、2回ダウンスイングをして軽く構える 見る限り、あの子は相当上手いみたいだし振りも綺麗だ なら、インハイでビビらせるか 楊は陽菜の首の高さを狙って投げた ボールはしっかり陽菜の首の高さで迫る だが、陽菜はびくともせずボールを見逃した コロ… 「そんなんで私がびびるとでも思ったんですか?」 あ、ちなみにボール球は数に入れないで下さいね 全く動揺を見せない陽菜はニコニコと笑みを浮かべている 「――…。」 びくともしない あんな所、誰だって軽くは避ける なんて子だ…… けど、そんなんで負けてられない… 楊はボールを取り出し、力いっぱいに投げた ――カアアァン… ボールはレフトの奥へ伸びる、伸びる 「私、アウトローは十八番なんで これで同点ですよ。」 楊の額からは汗がダラリと流れる アウトローをあそこまで飛ばせるのか? 左バッターでしかも女の子だろ 確かに思いっきり投げた 滅茶苦茶な子だ…… 「次で決まるって訳ね じゃあ、勝負にいきますか」 楊はセットに入り、右足に体重を乗せる ボールはベースの真ん中を走る それはセンターを越え、外野の柵も抜けた 「いい球でしたよ じゃあ、坂本先輩。 これからよろしくお願いしますね」 陽菜はケースにバットをしまって微笑んだ            
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