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――ピピピピッ
ピピピピッ
「……夢か」
カーテン越しの光を見つめて陽菜は体を起こした
「もー今日から高校生だってのに過去の夢見てどうすんの」
あの1年後、ひとつ上の幼なじみである大翔は親の転勤で転校した
幼い二人の約束は見事に打ち砕かれた
「…大翔くん、あの約束覚えてるのかな」
Yシャツのボタンを止める手から力が抜けるのを感じた
「陽菜~?
起きてるの?」
リビングからは母親の声が響く
朝食が出来たのだろう、微かな匂いが陽菜の鼻をかすんだ
「今行く」
真っ白いYシャツを着て、ネクタイを締めて、チェックのスカートを何回も折り曲げる
紺のブレザーを羽織り、鏡の前でぐるっと回って見た
「今日から、憧れの桜海高校に通うんだ」
陽菜は思わずスカートの裾を握った
「あ、髪。」
ヘアゴムをくわえると黒く長い髪を高い位置にまとめた
「これからはマネージャーだもんね」
キュッと縛ると、小走りで部屋を出ていった
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