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ただ暗い闇の中をアリスは進む。
闇以外に何もない空間をひたすらに歩いていく。
そして、突然眩い光がアリスを包んで―――
「………あれ?」
目をゆっくりあけると、そこはいつもの私の部屋だった。
なんだ、ただの夢じゃん。
一瞬そう思ったが、愛梨鈴の着ているエプロンドレスがそれを否定した。怪しく思って周りを見渡すと…
「えっ……嘘…」
いつもと変わらない部屋。
ドアがないことを除けば。
普段なら茶色のドアがあるはずのその空間は、もともとドアなどなかったのではと思わせるほど自然に白い壁が埋めていた。あまりにも自然すぎて、愛梨鈴はしばらく呆然としてしまった。ハッと我に返ったが、どうすればいいのか分からずおろおろしてしまう。
「ま、窓!!」
一言叫んで勢いよく窓の方を向き、シャーッと閉まっていたカーテンを開ける。
窓から出るのよ!2階だけど、死にはしないわ!
しかし、無情にも、窓もドアと同じように白い壁が覆っていた。愛梨鈴の体はショックで力が抜けてしまい、へなへなとその場に座り込んだ。
私、白兎を追いかけるどころかこの部屋から出られないじゃない。
しばらくして、愛梨鈴は立ち上がった。
何かあるはず。ヒントか、あるいは出口に繋がる物が。早く探して、ここをでて、
「…白兎を追いかけなきゃ。……え?」
ふと自分の口から洩れた言葉に疑問が浮かぶ。
何故追いかけなきゃいけないの?そんな必要はないのに…。
愛梨鈴は少し考え込んだが、それどころじゃないと思い部屋の捜索を再開した。
10分ほど経って、ふと勉強机の上に目をやると、見たことのない女の子の人形と目があった。妙に気になってじっくりと人形を観察する。すると、愛梨鈴はあることに気が付いた。
「もしかして……これ、チョコレート…?」
ふんわり香る上品な甘い匂いは、確かにチョコレートだった。人形の足元に文字の書かれたカードがあるのに気付き、そっと手にとる。
―Please eat me.―
「私を…食べて?」
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