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女中として働いているおばさん達の古い着物を貸してもらって着替える。
昔お祖母ちゃんに着付けを教えてもらっていたからすぐに着替え終わり、
「叶が着替え終わったら呼んでください」
と言って、部屋の外にいた総司に声をかける。
そう、ここは総司の部屋。
まぁ生活に不可欠なもの以外何も置いていない殺風景な部屋だけど……。
「あ、あの?」
「着替え終わりましたか?」
私に気づいて待っていてくれた総司が笑顔でそう言った。
「はい」
「じゃあ少し手当てをしましょう。女の子が傷を作ってしまってはいけませんから」
と、言って総司は大きな薬箱を取りに行った。
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「さぁ、じゃあ手当てしますよ?少し滲みるかもしれませんが…」
そう言いながら優しく水を浸した手拭いで傷を拭いてくれた。
「あとは、これを塗って…」
一つの塗り薬が総司の手に乗る。
「…ちょっと待ってください…」
傷口に薬をつけようとした総司に待ったをかける。
「どうかしましたか?」
「…それ、何の塗り薬ですか?」
「がまですよ」
ニッコリ笑う総司。
歴史の本で読んだことがある。
昔はがま(カエル)の塗り薬がよく使われていたって…。
「…嫌です!そんなのつけなくても治りますから!」
「ダメですよ!ちゃんと塗らないと!」
「治ります!!大丈夫ですよ、自然に治りますから!!」
「いけません。これを塗らないと菌がいっぱい入るんですよ!!」
「つけたら逆に入っちゃいますよ!!」
「とにかく塗りますよ!!是が非でも……」
と言って総司がニヤリと笑う。
「い、いや~~~!!」
私の叫び声が屯所に響き渡った。
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