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「……平助には甘えるんですね」
襖の向こうから機嫌が悪そうな総司の声がした。
「…総司?」
私は襖越しに総司に話かける。
「…僕とは馴染めませんでしたか…?」
「えっ?」
「僕はあなたより一つ年上です。だから平助のように馴染めませんでしたか?」
「そ、そんなこと…!」
「…お団子ここに置いときます。ちょっと頭冷やして来ます」
そう言って、廊下を歩いて行く音が聞こえる。
「………」
私は、そんなつもりで言ったつもりはなかった。
だって、この時代に来て初めて優しくしてくれたのは総司だったし…。
あんなにたくさん人と話したのも生まれて初めてだった…。
ここなら…総司がいてくれるなら生きたいってほんの少しだけ思えた。
痛みを堪えて障子を開けると美味しそうなお団子が置いてあった。
「アイツ…全然女と話したことないんだよ」
上を見上げると、仏頂面の土方さんがキセルを吹かして立っていた。
「お前が初めてだったんだぜ?
人助けたのも、必死になったのも……。
だからちょっと扱いに慣れてないんだよ。
自分が初めて心を開きたいと思った女に、あんなこと他の奴に言われてたらな…。
餓鬼のあいつの心が傷ついたってわけだ」
「…土方さんて…」
「なんだよ?」
「見かけによらず、優しいんですね。それより!総司の居場所教えてください!」
「知ってどうする?その体で行けるのか?」
「大分ましになりました!」
「…ハァ…。総司なら屯所から真っ直ぐ行った団子屋にいる」
「ありがとうございます!」
私は痛みにふらつきながらも、一人で屯所を出た。
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