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『新撰組屯所』
そう書かれた門を潜る。
映画村に来たみたい。
でもさっきから車やバイクの騒音も聞こえないし、アスファルトの地面も見当たらない。
……やっぱり、来てしまったんだ、幕末に。
仕方ない、大人しく今の現状を受けいれよう。
新撰組と言う表札?があるから、今はもう芹沢一派は暗殺された後なのであろう。
「芹沢さん…殺されたんですか?」
抱えてくれている沖田総司さんに聞いてみた。
「ええ。僕が殺しました」
そう答えて笑う沖田総司に悪寒を覚えた。
縁側を少し歩くと、男が沢山見えてきた。廊下をすれ違う度に振り向かれる。
「…あの沖田先生が…女を…」
ヒソヒソと聞こえてくる声。
全部つつぬけってことを分かっているのだろうか??
「いいんですか?変な噂たちますよ?」
「あはは。それは困りましたね。でも叶さんは美人だからきっと僕に嫉妬してるんです」
沖田さんはニコニコと笑いながらそう言った。
「…嫉妬?」
「あんな美しい女、沖田には似合わないって」
「…そんな!だって…」
私は言い淀んだ。
「だって?」
沖田総司さんの不思議そうに私を見つめる顔が近くにあってびっくりする。
“だって…沖田総司さんもかっこいい…”
そんな言葉を胸に閉まった。
「もう!気になるじゃないですか!」
少し頬を膨らませて子供のように怒る沖田総司さん。
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