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「始めに言っておくけど、あたしは勝ったとは思ってないから」
後から追い付いた亀山や正木の仲間達は、クルマを降りて自販機で熱い缶珈琲を手に情況を見守っていた。
ベンチに座った正木は俯いたまま可奈の話を聞いている。
「スペックがまるで違うクルマでバトルになれば、イーブンにする為にハンディが必要になってしまうでしょう?どちらかにハンディを負わす時点で本当はフェアじゃないし、今回のバトルは3秒後追いルールがなければあたしに勝ち目はなかった」
「たった3秒のハンディに俺は負けたのかよ」
「違うわ。あなたの敗因はあなた自身よ。コペンのポテンシャルを侮っていた事、周りに惑わされて冷静にドライブ出来なかった事ね」
「それでも俺は負けた」
「それじゃ、あたしは公道で使えないホイールとタイヤを使って一夜限りのドーピングして、反則ぎりぎりのトラップを仕掛けて3秒のハンディがある。勝っても喜べないし楽しめなかったわ。」
可奈は「もうこの話はオシマイね」と言って缶珈琲を飲み干しコペンに乗った
「公道を走る以上ルールを守る責任があるし、限界ぎりぎりに走ってもリスクだけが高くなるだけ。バトルがしたい、飛ばしたいと言うならサーキットに行きなさい」
そう言って可奈は去った。
そして、バトルを見届けたギャラリー達も帰って行った
「公道で俺達がやってる事は基本的には違法なんだよ。だからこそ一般車に迷惑掛けちゃいけねぇ。速いクルマ遅いクルマ、大人数載せたミニバンや荷物載せた営業車もいる。公道を走るなら周りを見て走るのは基本中の基本だ。事故って誰かを巻き込む前に気付く事だな」
最後まで残っていた正木達に、亀山が言った意味を理解出来たかは分からない。人気が無くなると正木達もシルエイティーに火を入れた。正木が終始無言の為、他の二人も気まずい雰囲気だ。
「…修二」
「二人共、悪かったな」
「西春先輩の所にシルエイティー持って行くんだろ?俺達も行くよ」
「悪い。ありがとな」
正木達が帰路につく頃にはベルデロードは静まり返っていた。
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